『少女クラブ』昭和35年(1960年)1月号

伝説的雑誌『少女クラブ』終盤を飾る、豪華新連載号
『少女倶楽部』から改題された『少女クラブ』は、『少女』と並ぶ人気を誇った月刊少女漫画誌である。手塚治虫氏の『リボンの騎士』をはじめ、多くの大家を輩出したこの雑誌は、1962年に『週刊 少女フレンド』へと発展的に移行し、その歴史に幕を閉じた。
しかし、その終盤においても勢いは衰えず、特に1961年1月号から始まった三作品の強力な新連載は、当時の読者を熱狂させた。
水野英子『星のたてごと』: 少女漫画の草分け的存在である水野英子の代表作の一つ。その叙情的で美しい絵柄とストーリーは、少女クラブ史に残る傑作となった。
細川知栄子『母の名よべば』: 可愛可憐な主人公と心揺さぶるドラマ性で、読者の心を掴んだ作品である。
東浦美津夫『夕月のやまびこ』: 他の二作と共に、雑誌の最盛期を支えた重要な作品群の一つである。
この号は、日本の少女漫画の歴史を語る上で欠かせない、才能ある作家たちが集結した記念碑的な一冊と言える。

ユカをよぶ海 ちばてつや
「あしたのジョー」で知られる巨匠・ちばてつやが、そのキャリアの初期に情熱を注いだ少女漫画の金字塔、それが『ユカをよぶ海』である。本作は1959年、雑誌『少女クラブ』にて連載が開始された。1950年代後半から約11年間にわたり、ちばてつやは「ママのバイオリン」や「ユキの太陽」「みそっかす」といった数々の名作を同誌および後継誌の『少女フレンド』へ送り出し、少女たちの心を捉え続けた。
物語は・・・主人公は、フランスへ渡ったまま消息を絶った画家の父を待ち続ける孤独な少女・ユカ。周囲の冷たい視線や貧しさという過酷な境遇に置かれながらも、彼女は決して希望を捨てず、その健気で真っ直ぐな心は、周囲の人々の凍てついた心を溶かしていく。当時、少女漫画の主流はいわゆる「悲劇もの」だったが、ちばてつやが描いたユカは、ただ涙に暮れるだけのヒロインでは無く、どんな苦難にも屈せず、自らの足で幸せを掴み取ろうとする。その姿は、昭和30年代という激動の時代を生きる読者たちへ、「人は信じれば必ず幸せになれる」という力強いメッセージを届けた。

巨匠の原点ともいえる、海のように深く温かい人間愛に満ちた物語である。

星のたてごと 新連載 水野英子
『少女クラブ』編集者に見出され、女性漫画家の第一人者となった水野英子。前作「銀の花びら」は緑川圭子(少女漫画家佐伯千秋)による原作付きであった。続いて発表した本作はワーグナーの「ニーベルングの指輪」にインスパイアされた水野英子によるオリジナルの長編作である。
物語は・・・人間の運命を支配する大神プレアデスには7人の娘がいた。そのひとりリンダは、金と銀の星が流れる夜に生まれた。リンダは死者の魂を死の国に導くのが務めである。人間の世界で戦死した敵国の王子ユリウスを愛してしまったリンダは、禁を犯して命を司る黄金の指輪を与えて生き返らせた。そのため、父によって神の世界から追放されたリンダは、愛するユリウスを殺さなければならない宿命を帯びる。

夕月の山びこ 新連載 東浦美津夫
1930年、兵庫県に生まれる。国鉄勤務のかたわら紙芝居を描き、大阪の同人誌「まんがマン」に参加。手塚治虫と交流し、48年、「月光の剣士」で単行本デビュー。『少女クラブ』に「キノコちゃん」「夕月の山びこ」(緑川圭子・作)などを発表。そのほかに「海の狼」などがある。
物語は・・・戦国の世。美しい夕月城は、謀反をおこした高山一族の軍勢に攻め寄られた。城主は、城の運命がこれまでと知るや、生まれて間もない二人の子を忠臣、白菊太郎に託してあえない最後を遂げた。年は巡って・・・城を遥かに離れた静かな山里に戦いを逃れてきた城主の娘、夕月さくら姫が山の娘に身をかえて育てられていた。そんなある日、里に迎えにきた白菊太郎から、初めて自分の身の上を聞かされ、そして、松王丸という兄のいることを知らされる。さくら姫と松王丸は囚われの身となっている母を救い出すために夕月城に向かう。

母の名よべば 新連載 細川知栄子
1936年、大阪府に生まれる。58年、『少女クラブ』に「くらないのばら」を発表しデビュー。『週刊少女フレンド』に連載した「なくなパリっ子」「東京シンデレラ」「あこがれ」とテレビ化された「アテンションプリーズ」で人気を博した。
物語は・・・少女わかなは母の手術が行われる病院へ向かうタクシーの運転手から忘れ物だと包みを渡されるが、間違いだと返す間も無くタクシーは去ってしまう。病院で包みを開け、それが大金の預金通帳と印鑑であることに驚くわかな・・・そこに不良少年の兄が現れ・・・。