おどり子人形 あすなひろし

空白の2年間を経て、画風が「華麗に一変」
休筆期間は職業を転々とした時期もあったが、漫画家としての技術を磨き続けていたのは間違いなく、再デビューを飾った、1964年『りぼん』春の増刊号掲載の「みどりの花」は華麗に一変した作品であった。
そこで読者が目にしたのは、以前とは別人のように洗練された画風であった。ポエミックな物語と緻密な描線が見事に融合し、ここで新たな「あすなひろしスタイル」が確立された。
隠れた名作「おどり子人形」に見る職人技
本作「おどり子人形」は、再デビュー直後の脂が乗った時期の作品である。扉絵や9ページ目の描き込みには、後に”職人気質”と称えられる彼ならではの緻密さが光る。
興味深いのは、誌面掲載時のタイトル変更である。オリジナルの表紙絵では「ながれ星.ひとつ」となっており、字体や仕上げ(網掛けとベタ塗りの違い)にも細かな差異が見られる。再デビュー後の、作家としての並々ならぬこだわりが細部にまで宿っている一作である。

おどり子人形 読切 あすなひろし『なかよし』1964年(昭和39年)8月号掲載 

2誌同時デビューと、伝説の「一変」――あすなひろしの軌跡
あすなひろしの漫画家人生は、華々しい幕開けから始まった。1961年『少女クラブ』正月増刊号の「まぼろしの騎手」と、『少女ブック』正月増刊号の「南にかがやく星」が同時に掲載され、異例の2誌同時デビューを果たした。
その後、『少女クラブ』を主な発表の場として数作発表したが、同誌1962年4月号〜6月号連載の「ちいさなうた」を最後に、ほぼ2年間の休筆期間に入る。後年に本人が「稚拙だった」と回想するように、当時はまだ技術を磨く習作期でもあった。
ちいさなうた
少女クラブ 1962年4月号
南にががやく星
少女ブック 1961年正月増刊号
雪のはなびら
週刊マーガレット 1965年5号
天使の星くず
週刊マーガレット 1965年26号
あすなひろし 1941年、東京都に生まれる。本籍は宮崎県西臼杵郡。高校卒業後、東宝映画宣伝部、商業デザインの会社を経て、61年、『少女クラブ』冬の号に「まぼろしの騎士」を発表しデビュー。少女誌のみならず少年誌、青年誌に作品を発表する。「とうちゃんのかわいいおヨメさん」「走れ!ボロ」で73年、第18回小学館漫画賞を受賞。そのほかに「山ゆかば!」「青い空を、白い雲がかけていった」「哀しい人々」など多数。2001年没(享年60歳)。
オリジナル表紙絵 タイトル「ながれ星,ひとつ」